「先生痛みがありますが、運動は続けていいですか?」
運動していると膝が痛みます。これ続けても大丈夫ですか?
あなたは筋骨格系の痛みを改善させるためクライアントにストレッチやエクササイズを教えているセラピスト/トレーナーです。
リハビリ中、このような質問がきました。「痛みが出ますが続けて大丈夫ですか?」あなたはどのように答えますか?
痛みは悪ですか?
それとも、痛みに耐えリハビリ、エクササイズを遂行させますか?
この疑問に答えるべく、科学的根拠を基にまとめました。
このブログを読めば明日から自信をもって答えることができるでしょう!
リハビリは無痛であるべき?No Pain,No gain?
痛みを出さずリハビリができればいいでしょうか?
様々なシチュエーションで答えは違ってきますが、リハビリにあたる先生方はどうでしょうか?
No pain,No gainとは「痛み無くして得るものなし」「努力無くして得るものなし」という英語のことわざにあてはまります。
痛みは耐えぬいてリハビリをしたほうが、本当に患者に利益があるのか?
どれくらい耐えればいいのか?
これらは最近に研究によって明らかになってきています。
ではいきましょう。
痛みを伴うエクササイズは短期的に有益
このメタアナリシスは、慢性筋骨格痛のリハビリテーションを調査し、痛みを伴うリハビリグループ、痛み無しのリハビリグループを回復程度を検討しました。
リハビリのエクササイズで痛みを許容した群では、治療開始から3ヵ月後の転帰が有意に良好であった。また、3~12ヵ月後と12ヵ月後では、両群間に有意差は認められなかった。
これらの情報をもとに著者らは「痛みを伴うエクササイズは避ける必要はなく、実際には痛みを伴わないエクササイズよりも短期的な利益をもたらす」と結論づけています。
この結果はセラピストがクライアントに説明するのに重要なことです。
現場では痛みを完全に避けて筋力や可動域を回復させることは、逆に回復を遅らせたり、現場に復帰するのに時間がかかりすぎることを経験します。
痛みを避けるよりも、痛みを乗り越える方が早期に改善することを示唆してくれています。
軟部組織損傷におけるNo pain No gain
痛みはリハビリにおいて完全に避ける必要はないことがわかりました。
次に紹介する研究で具体的な事例を見ていきましょう。
ハムストリングスの肉離れは一般的におこるスポーツ障害の一つです。
ハムストリングスのケガをした男性に
・無痛のリハビリ
・4/10まで痛みを許容するリハビリ
を比較した研究では、痛みを許容しながら運動するプログラムは悪影響がないことがわかりました。
さらに、4/10の痛みを我慢して運動したグループでは、プレー復帰時および2ヵ月後のハムストリングスの筋力が15%向上していることがわかりました。
この筋力アップはパフォーマンスアップや、再負傷のリスクを最大限に抑えるメリットがあります。
腱に関するNo pain No gain
Silbernagelらは、以下のルールを用いて、アキレス腱症の患者に対して、それぞれ痛みが5/10以下の状態で腱に負荷をかけると優れた結果が得られることを示しました。
この疼痛モニタリングモデルの重要事項
・2/10~5/10の痛みは、0~2/10の痛みより優れている。
・活動終了後の痛みは、NPRSで5までなら許されます。
・活動翌朝の痛みは、NPRSで5を超えないようにしてください。
・症状は週ごとに改善していることを確認する。
この疼痛モニタリングモデルを活用してアキレス腱に負荷をかける運動プログラムは悪影響がないことが示されました。
骨や関節に対するNo pain No gain
変形性股関節症や変形性膝関節症だけでなく、膝蓋大腿部痛の治療にも有効であることが示されています。
・休息や、従来の治療で改善しなかった膝蓋大腿部痛(PFPS)の患者40人。痛みモニタリングモデルを用いながら段階的にトレーニングを行うと、痛みが改善し、身体活動レベルが向上しました。
・デンマークの変形性関節症患者9,825人を対象とした研究によると、週2回の運動プログラムを6週間続けると、痛み、鎮痛剤の使用、休職率が減少したことを報告しました。
・変形性膝関節症患者において、疼痛モニタリングスケールを利用した運動の効果は非常に大きく、運動療法プログラムを行ったグループは1年後、人工膝関節置換術を選択した人は大幅に減少しました。
つまり、許容できる範囲の運動プログラムは、関節疾患に対しても有益であることがわかりました。
まとめ
痛みが完全に取れるまで待つよりも、痛みをある程度許容し、乗り越えるイメージでトレーニングをすることは様々な疾患に対して有益である可能性が示唆されました。
・リハビリ中の痛み(4/10~5/10まで)は問題なく、有益な可能性があります。
・症状が週ごとに改善していることを確認する。
・運動中と運動後は我慢できる範囲の痛みで行う。
これらを確認し、段階的なエクササイズを行い痛みを乗り越えていきましょう!
痛みの程度をモニタリングし、適切なエクササイズを提供し痛みを乗り越える。意識してアプローチしていきましょう!
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