多くの人が、腰椎を曲げて物を持ち上げるのは危険で、怪我につながると考えています。しかし、最近の研究によると、そうではなく腰椎を曲げて持ち上げる動作は、腰の筋肉や椎間板にとってメリットがある可能性さえあるようです。
このブログでは、腰椎を曲げてのリフティングは有害であるという一般的な思い込みを覆すいくつかのエビデンスを検証し、臨床実践や運動処方に与える影響について説明します。
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持ち上げる時に腰椎の屈曲を避ける根拠とは?
腰椎を屈曲させてのリフティングが腰に悪いという考えは、長い間存在しており、いくつかの根拠に基づいています
– 生体力学モデル:腰椎の屈曲は椎間板への圧縮力と剪断力を増加させ、椎間板ヘルニアや変性の原因になると予測しています。
– 疫学的研究:腰椎屈曲への職業的曝露は、腰痛や身体障害の高い割合と関連している。
– 臨床ガイドライン:腰痛の予防策として、持ち上げの際の腰椎屈曲を避けることを推奨している。
私たちは、上記のように腰を曲げないように持ち上げることを推奨されてきました。
これらによる腰椎の障害、変性の根拠は動物モデルからきているようです。
しかし、これらの議論にはいくつかの限界があり、人間の脊柱が生体内でどのように振る舞うかという現実を必ずしも反映してないようです。
持ち上げ動作時に腰は本当にまっすぐなの?
実はデッドリフトやグッドモーニングのようなトレーニングで、一見ニュートラルな背骨で行おうとしても、かなりの屈曲があることが研究で証明されています。
実際には20°以上の屈曲があるようです。(Holder 2013,Vigotsky et al. 2015)
「背骨を真っすぐにしてしゃがむ」こと自体が非常に難しいと予測されます。
腰を曲げて持ち上げるのは効率がいい可能性も
Mawston et al.(2021)は持ち上げ動作時の腰椎の姿勢が、体幹筋にどのように影響するか調べました。
反り腰、中間姿勢、腰を曲げた状態の3つのパターンで物を持ち上げました。
結果、反り腰や中間位で物を持ち上げるより腰椎を曲げて持ち上げる方が、脊柱起立筋の強度と効率を高める結果となりました。
著者らは「なぜここまで背中を伸ばして物を持ち上げるのを提唱するのか」と疑問を投げかけています。
臨床実践と運動処方への影響は?
エビデンスによれば、腰椎を曲げてのリフトは本質的に危険ではなく、人によっては有益でさえあります。従って、運動指導者は、リフティング中の腰椎の屈曲抑制したり矯正したりするのではなく、各個人の状況や目標を考慮し、フォームを確認する必要があります。
腰痛の方は背中を丸めることで腰痛を誘発する可能性がありますので、注意が必要です。
しかし先ほども提示したように
・解剖学的に腰を真っすぐにして持ち上げるのは不可能
・明らかに効率的ではない
可能性すらあります。
少しずつ、物を持ち上げる動作に適応できるように体の柔軟性や強さを向上し、動作練習を行う必要があります。
まとめ
腰を曲げて物を持ち上げる動作は「危険」であると認識されていますが、完全に避けることは不可能に近い。また腰椎を屈曲させて持ち上げるのは利点さえある可能性があります。
運動指導者は腰椎屈曲での持ち上げを恐れすぎず、動作に適応できるようサポートする必要があります。
強くしなやかな体を作り、痛みなく物を持ち上げられる体を作りましょう!
免責事項
このブログは、腰椎を曲げてのリフティングに関する最新の研究やエビデンスを紹介するものであり、医学的なアドバイスや診断を提供するものではありません。腰痛や疾患がある方は専門家の助言を受けサポートを受けることをお勧めします。